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第 2 世代 HAQM FSx for NetApp ONTAP ファイルシステムによるファイルワークロードの性能向上

時間の経過とともにパフォーマンスに対する要求が高まるファイルベースのワークロードをサポートすることは、組織にとって継続的な課題です。データセットが拡大するにつれ、静的なインフラストラクチャは変化のペースに追いつくために苦戦し、その結果、新しいインフラへの移行が混乱を招く可能性があります。組織は、将来の要件にシームレスに適応しながら、現在の規模に応じた速度を実現する、拡張性の高いファイルストレージを必要としています。

HAQM FSx for NetApp ONTAP は、HAQM Web Services (AWS) でネイティブにフルマネージド型の ONTAP ファイルシステムを提供しています。変動するワークロードに特化して設計されており、中断することなくパフォーマンスとストレージを拡張できます。FSx for ONTAP の第 2 世代ファイルシステムでは、第 1 世代ファイルシステムの最大 18 倍のパフォーマンスにスケールアップできる機能強化を発表できることを嬉しく思います。

この記事では、第 2 世代ファイルシステムを詳しく説明します。まず、FSx for ONTAP のパフォーマンススケーラビリティの背景から説明します。次に、第 2 世代ファイルシステムが前世代のファイルシステムよりも強化されたパフォーマンス、スケーラビリティ、柔軟性について紹介し、第 2 世代ファイルシステムが提供する 2 つの新機能を紹介します。1/ データバックアップからファイルに迅速にアクセスする機能、2/ iSCSI ブロックストレージの近代化され、簡素化され、高速な代替手段として NVMe-over-TCP プロトコルを使用する機能です。最後に、第 2 世代ファイルシステムの作成と更新方法について説明します。

HAQM FSx for NetApp ONTAP のパフォーマンスとスケーラビリティに関する背景

これまで、FSx for ONTAP ファイルシステムは 2 つの種類、1/ スケールアップと 2/ スケールアウトファイルシステムで提供されていました。第 1 世代のスケールアップファイルシステムは、単一のハイアベイラビリティ (HA) ペアのファイルサーバー上で最大 4 GBps のスループットと 192 TiB のプロビジョニング済みソリッドステートドライブ (SSD) ストレージをサポートしていました。第 1 世代のスケールアウトファイルシステムは、最大 12 の HA ペアのファイルサーバーにワークロードを自動的に分散させることで、複数のファイルシステムのパフォーマンスを 1 つに統合し、最大 72 GBps のスループットと最大 1 PiB の割り当て済み SSD ストレージを実現しました。

スケールアップファイルシステムは、現在、一般的なファイル共有、アプリケーション、データベースなどほとんどのワークロードの要件を満たしています。しかし、規模拡大や顧客のデータ利用の増加に伴い、ワークロードのパフォーマンス要件が高まる傾向があります。より大規模で要求の厳しいワークロードにはスケールアウトファイルシステムが適していますが、これまでパフォーマンス要件が既存のファイルシステムが提供できる範囲を超える場合、データを新しいファイルシステムに移行する必要がありました。これは、既存のファイルシステムの HA ペアに HA ペアを追加したり、HA ペアのスループットを変更したりすることができなかったためです。

第 2 世代ファイルシステムの導入

第 2 世代のファイルシステムでは、最大 6 GBps のスループット (第 1 世代から 50% 増) と 512 TiB の SSD ストレージ (第 1 世代から 160 % 増) を実現する単一の HA ペアでファイルシステムを作成できるため、単一の HA ペア内でワークロードを拡張する余地がさらに広がります。既存の HA ペアよりも高いパフォーマンスが必要な場合は、新しい HA ペアを単一のアベイラビリティーゾーン (AZ) ファイルシステムに追加できます。また、複数の HA ペアを持つファイルシステムのスループットは、いくつかの選択肢で変更できるため、ファイルシステムがワークロードに追従することがこれまでよりも簡単になります。

複数ペアから構成される第 2 世代ファイルシステム の FSx for ONTAPは、あわせて最大 72 GBps のスループットをサポートします。電子設計自動化 (EDA) 、ビジュアルエフェクト (VFX) レンダリング、機械学習トレーニングパイプライン、ペタバイト規模のデータベースなど、最も要求の厳しいワークロードにも対応可能です。さらに、HA ペアあたりのベースラインスループットが 50 % 向上 (4 GBps から 6 GBpsに) して、バースト能力も最大 300 % 向上 (ネットワークスループットバースト : 6.2 GBps 対 1.5 GBps、ディスクスループットバースト : 3.1 GBps 対 1.2 GBps)したことで、変動するワークロードが急増しても、スムーズに十分な余裕をもって処理することができます。

以下の仕様表は、第 1 世代と第 2 世代のファイルシステムを比較しています :

比較表

ファイルの復旧時間を短縮し、ほぼ即時アクセス可能なバックアップ復旧を実現

第 2 世代のファイルシステムでは、FSx for ONTAP はファイルのバックアップ復旧時間を短縮する新機能を導入しました。従来、FSx for ONTAP のボリュームバックアップを復旧する際は、データセット全体が復旧完了するまで、その中のデータにアクセスできませんでした。現在、第 2 世代ファイルシステム上でバックアップを復元すると、復元を開始してからおよそ数分でボリュームへの読み取りアクセスが可能になり、第 1 世代ファイルシステムでのバックアップ復元と比較して最大 17 倍の速度でバックアップデータセット全体を読み取ることができます。

この強化された復元機能により、誤って削除してしまった場合でも、完全な復元を待たずに重要なファイルをすばやく取り出すことができます。たとえば、復元を開始し、そこから必要なデータを転送し、復元をキャンセルすることで、ボリューム全体が復元されるのを待たずに (復元が完了する前であっても) 1 つのファイルまたはディレクトリ全体を復元できるようになりました。

NVMe-over-TCP プロトコルでブロックストレージを高速化

第 2 世代のファイルシステムには、新しいブロックストレージプロトコル「NVMe-over-TCP」も用意されています。iSCSI ブロックストレージに代わる NVMe-over-TCP は、最新でシンプルな使用感を提供します。たとえば、iSCSI では、クライアントがファイルシステムのファイルサーバー間でフェールオーバーできるようにファイルシステムノード間のマルチパスを管理する必要がありますが、NVMe-over-TCP ではプロトコルに組み込まれています。また、効率的なネットワークスタックにより、一部のワークロードではレイテンシーが低くなり、iSCSI よりもパフォーマンスが向上します。

第 2 世代ファイルシステムの作成

HAQM FSx for ONTAP ファイルシステムの第 2 世代 FSx は、AWS マネジメントコンソールAWS Command Line Interface (AWS CLI) 、または HAQM FSx の CreateFileSystem 関数を呼び出すコードを作成することで作成できます。マネジメントコンソールを使用する場合、図 : 1 に示すように、HAQM FSx for NetApp ONTAP を選択します。

ファイルシステムオプション

図 : 1 – ファイルシステムタイプの選択

第 2 世代ファイルシステムは、図 : 2 に示すように、クイック作成またはスタンダード作成のいずれかを選択して作成できます。クイック作成では、すべての利用可能なリージョンにおいて、第 2 世代ファイルシステムがデフォルトのファイルシステムタイプとして設定されています。スタンダード作成では、第 2 世代または以前の世代のデプロイを選択できます。

簡単に設定するには、クイック作成を選択します。次に名前を入力し、デプロイタイプはシングル AZ を選択し、必要な SSD ストレージ容量を入力します。スループット容量については、(SSD ストレージに基づいて) 推奨される値をそのまま使用するか、希望する値を入力することができます :

クイック作成

図 : 2 – 作成方法

スループットを指定する場合、図 : 3 に示すように、希望するスループットに最も近い利用可能なオプションの一覧が表示されます。
スループットキャパシティ

図 : 3 – スループットキャパシティオプション

希望する値によっては、コンソールには異なる数の HA ペアで構成される複数のスループットオプションが表示されます。ワークロードに適した構成を選択する際のガイドラインは以下の通りです :

  • 低いスループット – 単一の HA ペアは、最も低いスループット容量 (384 MBps、768 MBps) と最小 SSD ストレージ容量 (1 TiB) を提供します。ワークロードのライフタイムを通じて最大 6 GBps のスループットしか必要としない場合、単一の HA ペアを選択することでコストを最適化できます。 
  • 高いスループット – ファイルシステムが持つ HA ペアの数が増えるにつれ、総スループットと SSD ストレージのスケーラビリティが向上します。第 2 世代ファイルシステムではいつでも HA ペアを追加できますが、ワークロードのライフサイクル全体で必要とする最大スループットにスケールできるように、HA ペアの数を最初に決定することで、時間の経過に伴うワークロードのスケーリングが簡素化されます。HA ペアを追加する際はファイルシステム内のデータを移動する必要がありますが、既存の HA ペアのスループットやストレージをスケールアップする際は移動不要です。例えば、現在のワークロードが 6 GBps のスループットしか必要としないが、将来的に最大 24 GBps が必要になると予想される場合、 4 ペア構成を選択することで、最初に 6,144 MBps のスループット (1 HA ペアあたり 1,536 MBps) で開始し、ワークロードの成長に応じて 12,288 MBps (1 HA ペアあたり 3,072 MBps) にスケールアップし、さらに 24,576 MBps (1 HA ペアあたり6,144 MBps) にスケールアップできます。 
  • ブロックストレージ – ONTAP は、最大 6 HA ペアに対応するファイルシステムで iSCSI および NVMe-over-TCP プロトコルをサポートしています。これらのプロトコルをベースにワークロードを構築する予定の場合、最大 6 HA ペアまでのファイルシステム構成を選択してください。iSCSI と NVMe-over-TCP へのアクセスを失うことなくファイルシステムを 6 HA ペア以上に拡張することはできない点に注意してください。 

クイック作成では、ファイルシステムの Virtual Private Cloud (VPC) を選択し、最初に作成されるボリュームに対してストレージ効率を有効にするかどうかを選択します。選択後、次へをクリックして設定を確認し、ファイルシステムを作成をクリックします。FSx がファイルシステムを作成するまで、通常約 20 分かかります。

パフォーマンスとストレージの継続的な更新

ファイルシステムが作成された後、コンソール、CLI、または SDK を使用して、スループット、ストレージ、プロビジョンド IOPS、ファイルシステムがシングル AZ の場合 HA ペアを更新できます。コンソールを例にすると、ファイルシステムを選択すると、図 : 4 に示されるように各項目を更新するオプションが表示されます。

更新画面

図 : 4 – パフォーマンスの更新

リソースのクリーンアップ

ファイルシステムを作成した後、不要な料金が発生しないよう、FSx for ONTAP ユーザーガイドの「Cleaning up resources」セクションに記載された手順に従って、リソースの削除を行うことができます。

まとめ

第 2 世代のファイルシステムは、第 1 世代のファイルシステムに比べて最大 18 倍のパフォーマンススケーラビリティを提供します。各 HA ペアのファイルシステムのスループットを最大 6 GBps までスケールアップできるだけでなく、最大 12 HA ペアでファイルシステムを作成または拡張できます。さらに、バックアップからの復元時のデータアクセスが高速化し、NVMe-over-TCP プロトコルを通じてブロックストレージワークロード向けの iSCSI に代わる簡素化された選択肢も利用できます。これらの強化により、これまで以上に要求の厳しいワークロードをサポートすることが可能になります。第 2 世代ファイルシステムは、2025 年 6 月現在、以下の AWS リージョンで利用可能です:US East (N. Virginia、Ohio) 、US West (Oregon、N. California) 、Europe (Ireland、Stockholm、Frankfurt) 、Asia-Pacific (Sydney、Tokyo、Mumbai、Singapore) 。詳細については、FSx for ONTAP ユーザーガイドをご覧ください。

このブログは 2024 年 7 月 9 日に Charles Inglis (Senior Product Manager) によって執筆された内容を 2025 年 5 月の東京リージョンでの利用可能開始に伴い日本語化したものです日本語化したものです。原文はこちらを参照してください。

Charles Inglis

Ed Laura

Charles Inglis は、HAQM FSx のテクニカル担当シニア・プロダクト・マネージャーです。彼は、新機能の構築から、さまざまな業界のあらゆる規模のお客様が ONTAP のデータ管理機能を活用してデータをさらに活用できるよう支援することまで、HAQM FSx for NetApp ONTAP のあらゆる側面に携わっています。Charles はバーベキュー、ゲーム、旅行が大好きです。