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2025 年の小売業界においてクリティカルな 5 つのテクノロジートレンド
この記事は 「Five Critical Technology Trends for Retailers in 2025」(記事公開日: 2025 年 3 月 5 日)の翻訳記事です。
NRF Big Show で賑やかなベンダーのブースをくまなく訪ねてみると、そうした展示に共通して認められるトレンドに気づかずにはいられませんでした。つまり、こうしたテクノロジーによって今後数か月から数年で業界は再編成されると予想されます。トピックとしては必ずしも新しいものではありませんが、一般的なユースケースに対処するためのアプローチとしては斬新なものでした。さらに詳しく調べるために特定のブースに足を踏み入れると、小売業を根本的に変革する可能性を秘めていると思われる 5 つのテーマを発見したのです。
1. 生成 AI
わかりやすい話題から始めようと思いますが、生成 AI について議論しないのは、ジョン・レノンに言及せずにビートルズについて話すようなものです。昨年、生成 AI の話題は大いに盛り上がりましたが、実際の成果を共有できた企業はほとんどありませんでした。今年は状況が異なります。小売業者は実験でとどまることなく、利益につながるユースケースを費用対効果の高い方法で拡張することに注力しています。複数の生成 AI のユースケースをうまくサポートしている小売業者の一例として、消費者と販売者が動画を作成するのを生成 AI で支援している HAQM があります。また、HAQM Rufus でスマートショッピングアシスタントを使用できるようにもしています。
これまでのところ、業界のなかで最も成功しているのは生成 AI を使用して商品カタログデータを改善している小売業者です。商品属性データを自動的に収集するようにしたことで、そうした小売業者は商品説明を改善し、より正確な検索結果を提供できます。たとえば、27 ブランドを展開するインドのライフスタイル小売業者の Nykaa は、以前は 300 人の従業員が商品リストのデータを確認して、データの欠落や不正確さを調べていました。このプロセスを自動化することで、間違いが減り、精度が向上し、チームは商品をはるかに早く売り場に届けることができるようになりました。
バーチャルショッピングアシスタント、商品画像操作、商品アイディエーションなど、他にも多くのユースケースがありましたが、こうした成功事例が私にとって最も印象的でした。
2. 自律型 AI (Agentic AI)
AI エージェントと混同されることもありますが、「自律型 AI」は、私たちが日常的に使用するチャットボットをはるかに超えたもので、途方もない可能性を秘めています。自律型 AI は特定の業界やタスクに合わせたものですが、汎用目的のものも開発されています。汎用自律型 AI の例としては、Anthropic 社製生成 AI が PC を操作する Anthropic Computer Use があります。Gartner は、2028 年までに、自律型 AI が日常業務の意思決定の 15% を自律的に行うようになると予測しています。これは、2024 年のゼロパーセントから増加しています¹。こうした自律型 AI を非常に価値のあるものにしているのは、以下の 3 つの点です。まず、人が関与することなくタスクを実行できるため、自律的であることです。2 つ目は、LLM の思考の連鎖プロンプティングを利用して問題を分解できることです。3 つ目は、タスク完了をさらに支援するツールを呼び出せることです。つまり、テキストや画像を生成するだけでなく、ユーザーに代わってアクションを実行します。
こうした汎用自律型 AI はとても素晴らしいですが、私が本当に興奮するのは、Salesforce for retailers が提供しているような業界特化型のエージェントです。このエージェントには、Agentforce に見られるスキル特化型の自律型 AI も含め、Salesforce for retailers で提供されるような、専門的なスキルを持つ自律型 AI が含まれています。 Agentforce は Salesforce プラットフォームのエージェント層であり、企業がより多くのことを成し遂げるのを支援し、担当者がより良い顧客関係を構築できるよう支援し、AI を通じた成功に向けてデジタルワークフォースとして常時稼働します。業界向けの自律型 AI のもう 1 つの優れた例はアマゾンウェブサービス(AWS)のガイダンスに掲載されているように HAQM Bedrock エージェントをショッピングアシスタントとして使用している例です。これにより、小売業者は自律型 AI を利用して商品のレコメンデーションを行うことができ、カートに商品を追加することさえできます。将来的には、予測、商品の再注文、請求書処理、価格設定など、ルールがあまり定義されておらず、推論スキルを必要とする分野に特化した AI を活用したエージェントが必ず登場するでしょう。
3. リテールメディアネットワーク
HAQM は 2012 年にストアフロント広告の掲載を開始しましたが、最近では、HAQM Retail Ad Service と呼ばれる新しいサービスを含め、小売業者はこのテクノロジーをより簡単に利用できるようになりました。 iHerb や Oriental Trading Company などのオンライン小売業者は、HAQM Retail Ad Service を使用して自社のサイトに掲載する広告を調達しています。これは、広告料による新たな収入源であると同時に、自社商品の売り上げを伸ばす役割も果たしています。
ハイパーパーソナライゼーションテクノロジーが成熟し続けるにつれて、広告のターゲットはより的確になり、したがってより効果的になります。これらの広告では、Signage Stick などの低コストのハードウェアを使用して、費用対効果の高い方法でホームページ以外の媒体へも配信範囲を拡大できます。
4. 没入感に優れたショッピング体験
何年もの間、Proto ホログラム、マジックミラー、Bodd 3D ボディスキャン、拡張現実などのテクノロジーを使用して、デジタル技術を実店舗に組み込むことについて話してきました。さまざまな種類のテクノロジーにより、ウェブショッピングのさまざまな側面を物理的な領域に取り込むことが可能になりました。具体的には、Proto のホログラムディスプレイ(Luma と M)によって製品の視覚化が向上し、インタラクティブ性が向上し、成約率が増加します。また、Bodd の 3D スキャンテクノロジーにより、消費者は簡単に自分に合う衣服のサイズを判断できます。現在、このような没入型体験のトレンドは先に述べたデジタル技術を実店舗に持ち込むトレンドとは逆を行っていて、仮想店舗、3D 商品画像、店内チャットボット、仮想試着ソリューションにより、オンラインショッピングに店舗でのショッピングの側面を取り込もうとしています。今後、小売業者はオンラインショッピング体験を実店舗でのショッピングのように感じさせる取り組みを続けると同時に、実店舗での体験をオンラインショッピングと同じくらい効率的にしていくことでしょう。
5. モダンコマース
いろいろ話題になっているにもかかわらず、ほとんどの小売業者には依然として情報サイロが存在しています。多くの企業は今でもバッチ処理を使用してデータを移動しているため、レイテンシーの問題が発生する可能性があります。イノベーションのもう 1 つのハードルは、脆弱な統合です。小売業者は必要な変化を把握していますが、技術負債や過去の CIO が下した現状に適応できないアーキテクチャの決定に制約されています。小売業は商品販売の点では間違いなく秀でていますがテクノロジーの面ではそうではありません。ですから、次世代のコマースを真に実現するには、次の 4 つの主要分野に投資する必要があります。
- オムニチャネル — 現時点では、ほとんどすべての小売業者が何らかの形のオムニチャネル販売とマーケティングを行っていますが、収益性を確保するのに十分に最適化されているでしょうか? 返品を含む例外ケースに対処できているでしょうか? 購買体験は可能な限りシームレスでしょうか? 堅牢なオムニチャネル体験への投資を優先することは、小売業者にとって今や必須となっています。
- ユニファイドコマース —店舗内システムとオンラインシステムを継ぎはぎにつなぎ合わせると、買い物客にその小売業者がオムニチャネルであると思わせることができるかもしれませんが、本当のソリューションはデータを統合して、1 つの商品カタログ、1 つの顧客データベース、1 つのプロモーションセットにすることです。チャネルは、単一の販売エンジンによって駆動する特注のユーザーインターフェイスを備えている必要があります。
- コンポーザブルコマース — モノリシックなインフラストラクチャの硬直性と統合の複雑さがイノベーションを妨げています。これを解決するには、小売業者は最新の MACH アーキテクチャを使用し、コマースに対して柔軟かつスケーラブルで俊敏に構成可能なアプローチを適用する必要があります。
- パーソナライゼーション — 買い物客それぞれに関して収集したデータを活用して、小売業者は可能な限りパーソナライズした体験を提供する必要があります。大きく差別化された、関連性が高く魅力的な体験への期待は高まってきています。
すべての小売業者が同じ状況にあるわけではないため、それぞれのジャーニーは異なります。それでもいずれの小売業者もこれら 5 つのテーマを検討し、長期戦略の一環として最も重要なテクノロジーを採用していただけるようになるのを楽しみにしています。
[1] The Top 10 Strategic Technology Trends for 2025, Gartner
著者について
David Dorf
David Dorf は AWS でワールドワイドリテールソリューションを統括し、小売に特化したソリューションを開発し、小売業者のイノベーションを支援しています。AWS に入社する前、David は Infor Retail、Oracle Retail、360Commerce、Circuit City、AMF Bowling、Schlumberger のリテールおよび銀行部門でリテールテクノロジーソリューションを開発していました。David は数年間 NRF-ARTS で技術標準化に取り組み、MACH アライアンスの諮問委員会のメンバーを兼任し、Retail Orphan Initiative の慈善団体を支援していました。彼はバージニア工科大学とペンシルベニア州立大学で学位を取得しています。
本ブログは CI PMO の村田が翻訳しました。原文はこちら。