HAQM Web Services ブログ
キヤノンITソリューションズ株式会社様:ローコード開発プラットフォームのコード生成機能を 3 ヶ月で構築。サービス利用者は開発工数を最大 50% 削減可能に
本ブログは、キヤノンITソリューションズ株式会社様と HAQM Web Services Japan が共同で執筆しました。
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの木村です。
本記事では、キヤノンITソリューションズ株式会社様が HAQM Bedrock を活用した新機能によって既存サービスの強化を行なった事例についてご紹介します。
背景 / 課題
キヤノンITソリューションズ株式会社様が提供するローコード開発プラットフォーム「WebPerformer-NX」は、デジタルセルフサービスを推進するビジネスユーザー(以下ビジネスユーザー)が迅速にWebアプリケーションを開発できる環境を提供しています。このプラットフォームでは、基本的な機能は GUI で簡単に実装できる一方、複雑なロジックや外部サービスとの連携の実装には JavaScript、SQL や WebPerformer-NX 特有の関数を手動で記述する必要がありました。
この課題は特に、プログラミングに精通していないサービス利用者にとって大きな障壁となっていました。コードの記述に時間がかかり、本来のビジネスロジックの実装に集中できないという状況が発生していました。構文エラーや論理的なミスが発生した際には、デバッグにも多くの時間を費やしていました。
キヤノンITソリューションズ株式会社様では、これらの課題を解決し、より多くのビジネスユーザーがスムーズにアプリケーション開発を行えるような機能強化が求められていました。
ソリューション / 構成内容
この課題に対応するため、キヤノンITソリューションズ株式会社様は HAQM Bedrock を活用しコード生成機能を WebPerformer-NX に実装しました。
自然言語からコードを生成する仕組み
新機能では、サービス利用者が日本語の自然言語で実装したい機能を指示すると、HAQM Bedrock がその指示内容を受け取り、適切な JavaScript コードや WebPerformer-NX 特有の関数を含むコードを自動生成します。例えば、「年月日の入力フィールドの値より、現在の日付から年齢を算出する。未来の日付を入力したらエラー処理する」といった指示を書くと、フォームに入力された値と現在の日付を取得して差を計算し年齢を表示する処理や、エラーハンドリングを行うコードが生成されます。
プロンプトエンジニアリングの工夫
単純に生成AIを導入するだけでは、WebPerformer-NX 特有の関数や構文に対応したコードを生成することはできません。しかも、それら WebPerformer-NX 固有の要素は、固定された情報ではないため、ファインチューニングで対応することもできません。
そこで、開発チームはプロンプトを工夫し、それら WebPerformer-NX 特有の要素をインコンテキスト・ラーニングすることで、WebPerformer-NX 特有の関数や構文を正確に理解し生成できるようにするとともに、一般的な JavaScript コードと WebPerformer-NX 特有のコードを適切に組み合わせられるよう工夫しました。これにより、サービス利用者の自然言語による指示から、実際に動作する高品質なコードを生成することが可能になりました。
最適なモデルの選定
複数の生成 AI モデルを検証した結果、コード生成の精度が最も高かった Anthropic 社の Claude を採用しました。Claude は特に、コンテキストを理解する能力と、正確なコード生成能力に優れており、WebPerformer-NX 特有の関数にも対応できることが確認されました。
短期間での開発実現
HAQM Bedrock が提供する充実した機能群(監視やログ機能など)により、開発チームは生成AI機能の実装に集中することができました。その結果、わずか 3 ヶ月という短期間でコード生成機能を開発し、リリースすることに成功しました。HAQM Bedrock の呼び出しには、HAQM API Gateway、AWS Lambdaといったサーバーレスサービスを活用し、インフラ管理の負担軽減、スケーラビリティの確保、コスト最適化を実現しました。
導入効果
WebPerformer-NX へのコード生成機能の導入により、以下のような効果が得られました:
キヤノンITソリューションズ株式会社様側の効果
- 短期間での機能実装:
- HAQM Bedrock のマネージドサービスとしての特性を活かし、わずか 3 ヶ月という短期間で高度なコード生成機能を実装できました。これにより、市場の要求に迅速に対応することができました。
- 開発リソースの効率化:
- 生成 AI 機能の開発において、インフラ構築やモデル管理などの負担が軽減され、コア機能の開発に集中できました。
サービス利用者側の効果
- 高精度なコード生成:
- 生成されたコードの 70〜90% はそのまま利用可能であることが確認できており、残った処理も簡単な修正で使用できるケースが大半であることが確認できています。これにより、利用者はコードの記述ではなく、ビジネスロジックの設計に集中できるようになりました。
- 開発工数の大幅削減:
- 複雑なロジックのコード記述にかかる時間が大幅に削減され、開発工数を最大 50% 削減することに成功しました。特に、プログラミングの経験が少ないユーザーにとって、この効果は顕著でした。
- 学習コストの低減:
- プログラミング知識がなくても、自然言語で指示するだけでコードが生成されるため、WebPerformer-NX を使いこなすための学習コストが低減しました。これにより、より多くのビジネスユーザーがアプリケーション開発に参加できるようになりました。
まとめ
キヤノンITソリューションズ株式会社様の事例は、生成 AI を活用することで既存のサービスを強化できることを示しています。HAQM Bedrock を活用したコード生成機能の導入により、WebPerformer-NX の使いやすさが向上し、サービス利用者の開発工数を最大 50% 削減することに成功しました。
また特筆すべきは、3 ヶ月という短期間で高精度のコード生成機能を実装できたことです。これは、HAQM Bedrock が提供する充実した機能と使いやすさが貢献をしています。
今後も、キヤノンITソリューションズ株式会社様は生成 AI を活用したサービス強化を進め、より多くのビジネスユーザーがプログラミングの壁を越えて、自らの業務課題を解決するアプリケーションを開発できる環境を提供していく予定です。
WebPerformer-NX は、無償で利用いただけるフリーアカウントやサンプルアプリをご提供しています。WebPerformer-NX 公式サイトにアクセスいただき、ページ中段の「スタートガイドアカウント作成ガイド」から 3 ステップでご登録いただけます。
執筆者
キヤノンITソリューションズ株式会社 プラットフォーム開発部 高塚 剛 様 (写真左)
キヤノンITソリューションズ株式会社 デジタルサービス開発部 佐野 彰彦 様 (写真右)