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【開催報告】伊藤忠商事 繊維カンパニーと実践!HAQM 式 生成 AI 活用ワークショップ
本記事は、2025 年 3 月に実施した、伊藤忠商事 繊維カンパニーとそのグループ会社 5 社との生成 AI ワークショップの内容をご報告するものです。2024 年には本ワークショップに先立ち、ファッションアパレル事業、ブランドマーケティング事業を手掛ける同社 繊維カンパニーとそのグループ会社に対し、ファッション・アパレル業界での生成 AI 活用事例やユースケースをキャッチアップする勉強会を実施していました。その中で、「技術の進化に驚いた」「前提知識をキャッチアップできた」というお声がある一方で、「自分たちにとって有効なユースケースが何か分からない」「自社として役立つユースケースを特定したい、具体化したい」といったお声も多数いただきました。そういったお客様の声に応えるべく、本ワークショップを企画しました。
生成 AI 活用の実態
総務省が公開している令和 6 年版の情報通信白書によると、生成 AI を“使っている”(「過去使ったことがある」も含む)と回答した割合は日本で 9.1 %であり、他国に比べてとても低い結果となっています。生成 AI を使わない理由として「使い方がわからない」、「自分の生活に必要ない」の 2 つがそれぞれ 40 %以上と高い回答率を得ています。前者については、少しの座学と実際に触って体験してみることで、「一般的な使い方」としては理解して解決しやすい一方、後者については「自分たちの業務に照らしてどう活用できるか」を考える必要があり、ハードル高く感じていらっしゃるお客様も多いのではないでしょうか。今回のワークショップでは、HAQM 流の顧客起点でのアイデア創造フレームワークである “Working Backwards” に則りながら、業務を共にする仲間と一緒に生成 AI 活用ユースケースを考え議論することで、利用シーンの解像度を上げていただくことを目的としています。
ワークショップの概要
アジェンダは、下記の通りです。
- AWS の生成 AI 概要、アパレルユースケース / 取り組み事例の紹介
- アパレルユースケースデモ – お客様の声を可視化しよう –
- 生成 AI 時代における顧客起点のサービス企画 – Working Backwards の実践 –
AWS の生成 AI 概要、アパレルユースケース / 取り組み事例の紹介
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 アカウントマネージャー 棚橋 里奈
2024 年に実施した勉強会の振り返りとして、AWS における生成 AI の概要、仮想試着などファッション・アパレル業界ならではのユースケース、そして伊藤忠商事 グループ会社における生成 AI 活用の取り組み事例について改めてご紹介しました。その勉強会の参加者アンケートでは、生成 AI の活用シーンとして、1) EC ビジネス / マーケティングへの活用、2) 社内のデータ活用、3) 業務改善 / 効率化、の 3 点について活用できるのではないかとご期待の声が寄せられていました。
アパレルユースケースデモ – お客様の声を可視化しよう –
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 濱上 和也
活用シーン 1) EC ビジネス / マーケティングへの活用 の例としては、2025 年 3 月 4 日 〜 7 日に東京ビッグサイトで開催された、リテールテックJAPAN においてAWS が展示していたデモの内容をご紹介しました。具体的には、没入型店舗のショッピング体験を実現する HAQM Beyond、仮想試着を実現する Virtual Try-All、手描きのイメージからプロダクトイメージを生成しさらにソーシャルメディアごとのマーケティングキャッチを生成する AWS デモアプリケーションの 3 つです。活用シーン 2) 社内のデータ活用、3) 業務改善 / 効率化の例としては、COACH などのブランドを取り扱う Tapestry 社の事例を取り上げました。お客様の声を店舗スタッフ経由で年間 30,000 件のフィードバックを音声データとして集め、そのデータを分析することで、お客様のニーズ調査や店舗間在庫の改善に繋げられていることをご紹介しました。また前回の勉強会アンケートにて「監査業務において、ヒアリングしたメモから業務フロー図を生成したい」といったリクエストを受けて、現場での音声でヒアリングした内容を文字起こし、要点を抽出、その要点をもとに業務フロー図として可視化という一連の流れのデモを実施いたしました。デモは、AWS の生成 AIのサンプルソリューションである「Generative AI Use Cases(略称 GenU )」を使用し、すでにある機能を組み合わせることで簡単に実現できることをご紹介しました。
生成 AI 時代における顧客起点のサービス企画 – Working Backwards の実践 –
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 イノベーションプログラム シニア事業開発マネージャー 櫻井 直子
ここから、生成 AI を活用するユースケースを見つけるためのワークショップに入りました。顧客起点で考え、逆算で仕事を設計するというHAQM のフレームワーク Working Backwards の手法を紹介し、5 つの質問からお客様の体験がどう良くなるのか、ペンと付箋紙を用いて書き出すところから始まりました。そして会社ごとに課題テーマを絞り、プレスリリースのタイトルや内容、想定されるお客様の声を言語化していただきました。書き上げた後には、これによって自社のビジネスや業務をどう変えるのか、どんな付加価値をもたらすのか、会社間でお互いに発表しあうことで、アイデアをさらにブラッシュアップされようとしている様子を伺うことができました。
ワークショップは限られた時間のために、各社が作成したプレスリリースは部分的な仕上がりにとどまりましたが、その内容から PR/FAQ (Press Release and Frequently Asked Questions) の完成形に近づけるべく、AWS 生成 AI サービス PartyRock を利用した「PR/FAQ 作成支援アプリケーション」を利用しました。このアプリケーションにより、プレスリリースのまだ仕上がっていない部分を補完することができ、さらに FAQ やお客様の利用シーンにおけるビジュアルイメージまで生成することができました。これには会場から大きな歓声が上がりました。
お客様の声
伊藤忠商事 繊維カンパニー 繊維デジタル戦略室 若谷様から次のようなコメントを頂戴いたしました。「単なる事例紹介にとどまらず、AWS のメソッドに沿って生成 AI 活用方法を正しく導き出すトレーニングまで経験させて頂き、事業会社各社含め大変為になる時間でした。このノウハウを繊維カンパニー傘下の各社員レベルにまで浸透させ、生成 AI をいかに活用するかを考えることに各自が注力していくように啓蒙したいと思います。」
またアンケートでは、参加者の 7 割以上の方から「次は AWS の生成 AI サービスを実際に触りたい、ハンズオンで体験したい」、3 割以上の方から「個別の導入支援を受けたい」と回答いただきました。
まとめ
ワークショップを通じて、各社計 6 つの具体的なユースケースを特定することができました。ユースケースの内訳として、1) EC ビジネス / マーケティングへの活用 に関するものが 1 件、2) 社内のデータ活用 に関するものが 3 件、3) 業務改善 / 効率化 に関するものが 2 件でした。EC サイトに訪れたお客様、自社の営業担当、意思決定者、それぞれを生成 AI で支援する素晴らしい活用アイデアが生まれました。Working Backwards が、生成 AI 活用ユースケースの解像度を上げることに役立つとともに、Working Backwards を進めることそのものにも生成 AI が活用できることを体験いただきました。Working Backwards についての詳細や他社の活用事例について知りたい場合は、こちらの記事 もあわせてご確認ください。
お客様の声に耳を傾けて、今後も期待に応える企画を考えてご提供していきます。
著者について
櫻井 直子(Naoko Sakurai)
事業開発統括本部 イノベーションプログラム シニア事業開発マネージャー
HAQM 社内での取り組みをご紹介しながら、お客様のデジタル・組織変革支援を行っています。好きな (関心ある)AWS サービスは HAQM SageMaker Data Wrangler。
松本 敢大(Kanta Matsumoto)
技術統括本部 ソリューションアーキテクト
普段は小売業・商社のお客様を中心に技術支援を行っています。好きな AWS サービスは AWS IoT Core。趣味はカメラで、動物が好きです。
濱上 和也(Kazuya Hamagami)
技術統括本部 ソリューションアーキテクト
流通・小売・消費財のお客様を担当するソリューションアーキテクトです。好きな AWS サービスは HAQM Connect で、業界問わずコンタクトセンター関連の技術支援も行っています。