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EBA FinOps Party 事例:Sky株式会社様が短期的施策であるクイックウィン最適化により、ワークショップ参加チームにおいて年間 20% のコスト最適化見込み

はじめに

本ブログでは、Sky株式会社様の更なるコスト意識向上を目指して実施したコスト最適化実践ワークショップである Experience-Based Acceleration(EBA)FinOps Party を通じ、ワークショップ参加チームにおいてAWS 利用料が年間 20% の最適化見込みとなった事例をご紹介します。幾つかのワークロードを AWS へ移行した直後にワークショップを実施したことで、早期に最適化されたコストに近付くことができています。EBA FinOps Party ワークショップは、オンプレミスから AWS への移行方式として Rehost を採用し、クラウド最適化の検討ができていない場合に最も効果が見込まれます。

※ Sky株式会社様の状況において 20% の最適化見込みとなりましたが、すべてのお客様で同程度の効果が見込まれることを保証するものではございませんのでご留意ください。

Sky株式会社様について

Sky株式会社様は、クライアント運用管理ソフトウェアの SKYSEA Client View、営業名刺管理サービスの SKYPCE といった自社パッケージ商品の開発・販売、協業・連携ソリューションの販売・導入などの SI ビジネスを手掛けています。AWS アドバンストティアサービスパートナーであり、日本初の AWS Service Catalog を含む複数のサービスデリバリープログラムを取得し、AWS Summit Japan 2024 にも出展いただきました。ユーザー企業の内製化を支援するためのソリューションを持った日本独自の AWS パートナーである「内製化支援推進 AWS パートナー」でもあります。営業名刺管理サービス SKYPCE のクラウド版は AWS で稼働しており、AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)の認定を受けています。

EBA FinOps Party 実施の背景

Sky株式会社様では、従業員のコスト意識向上とコスト最適化のスキルアップを継続して測っており、培ったノウハウを SI 事業におけるお客様に提供しておりますが、お客様へ最適なコストで提案が可能となるエンジニアを創出していくために社内で継続的にコスト意識を根付かせていきたいと考えていました。こちらに対して、コスト最適化を組織として取り組む FinOps 実践を目的としているワークショップ EBA FinOps Party の実施を AWS から提案しました。EBA FinOps Party では、単なるコスト「削減」ではなく、組織として無駄なコストを抑制するための継続的な「最適化」活動を実施するためのフレームワークである Cloud Financial Management(CFM)や、コスト可視化、最適化に利用できる AWS サービスを学べます。ワークショップの最後には、学んだことを活かしてコスト最適化施策報告をエグゼクティブに向けて行い、エグゼクティブにコスト最適化施策実施のスポンサーとなっていただくため、コスト意識が更に向上することが期待され開催に至りました。事前に CFM フレームワークに則ったアセスメントを行いアジェンダを検討し、Sky株式会社様では以下内容で 3 日間に分けて開催しました。

  • Day1: 基礎編(1 時間)
    • コスト最適化フレームワーク紹介
      • CFM フレームワーク、コスト最適化に関する AWS サービス・ソリューションのご紹介
  • Day2: 実践編(2 時間 30 分)
    • AWS Cost Explorer の概要・ハンズオン
      • コスト配分タグ、RI/SPs の紹介、AWS Cost Explorer での推奨事項確認方法、報告会に向けたコスト最適化の確認ポイントの説明
    • Instance Scheduler on AWS 紹介
      • Instance Scheduler on AWS の概要、設定・実施のデモンストレーション
    • スポットインスタンス紹介
      • スポットインスタンスの概要、ベストプラクティスの紹介
  • Day3: 報告会(1 時間)
    • コスト最適化施策ご報告
      • 検討したコスト最適化施策のエグゼクティブ向け発表

Day1:基礎編

1 日目の基礎編では、CFM フレームワークとコスト最適化に関する AWS サービスについてご紹介しました。CFM フレームワークは組織的に「可視化」、「最適化」、「計画・予測」のサイクルを回すこと、つまり「FinOps の実践」を行い、より効果的なコスト最適化を継続的に行うものです。

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CFM フレームワークを AWS で実践する場合について簡単にご説明します。「可視化」では、AWS アカウントの分離、タグ付けにより分析の土台を整え、AWS Cost Explorer や Cost & Usage Report を利用し分析を行います。「最適化」では、インスタンスサイズや購入オプション(RI/SPs、スポットインスタンス)の見直しなどを行うクイックウィン最適化と、サーバレスやマネージドサービスを利用したアーキテクチャへと変更するアーキテクチャ最適化を検討します。「計画・予測」では、AWS Cost Explorer の予測機能、AWS Budgets の予測アラート機能を利用し、クラウド利用の計画・予測を行います。CFM フレームワークの詳細に関しては、ブログ「クラウド財務管理はコスト削減以上のメリットをもたらす」または builders.flash 記事「AWS でのコスト最適化の進め方」をご参照ください。

Sky株式会社様では、「可視化」のアクションとして AWS Cost Explorer を毎日確認されているメンバーもいる一方で、コスト最適化に関する AWS サービスの概要を把握されていないメンバーもいらっしゃいました。このようにスキルが異なるメンバーを集い改めてコスト最適化について学ぶことで、全員が同じ知識を持ってコスト最適化に向かえる状態になることができました。

Day2:実践編

2 日目の実践編では、AWS からハンズオンをご提供するため、タイムリーにフォローができるように Sky株式会社様のオフィスでワークショップを実施しました。コンテンツは、AWS Cost Explorer を利用したコスト分析ハンズオン、Instance Scheduler on AWS、スポットインスタンスのご紹介です。AWS Cost Explorer のハンズオンは、3 日目のエグゼクティブへの報告に向けて、各 AWS アカウントのコストとコスト最適化のための推奨事項を各自で確認できるようになることが目的です。Instance Scheduler on AWS およびスポットインスタンスのご紹介に関しては、事前のアセスメントにおいて「弾力的なクラウド利用」と「スポットインスタンスの活用」という項目のスコアに改善余地が見受けられたので、重点的にご支援をするためにアジェンダに組み込んでいます。なお、ワークショップの内容に関しましては、例えば「AWS Budgets のデモンストレーションが見たい」などお客様のニーズに合ったコンテンツをリクエストしていただけます。

本ブログでは各 AWS サービス、ソリューションに関するご説明は割愛しておりますので、以下をご参照ください。

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AWS Cost Explorer ハンズオンにおいては、「インスタンスタイプや HAQM Simple Storage Service (HAQM S3) ストレージクラスが AWS Cost Explorer で確認できることを初めて知った」、「コスト最適化の余地を幾つか見つけられた」といった声をいただきました。AWS Cost Explorer はコスト「可視化」の目的で利用されることが多いですが、「最適化」の観点でもご利用いただけます。Instance Scheduler on AWS は HAQM EC2 および HAQM Relational Database Service(HAQM RDS)の開始・停止スケジュールを組むことができるソリューションですが、ワークショップ中の時間内に停止するシナリオで実際に設定・停止する様子をご覧いただいたことで活用イメージを持っていただきました。スポットインスタンスについては、Sky株式会社様では利用されている部署が限定的であったため、他の部署においても HAQM EC2 インスタンス使用時の選択肢として挙がるように、Sky株式会社様が不安に感じられていた中断への備えやベストプラクティスのご説明を行いました。

Day1、Day2 の内容を踏まえて、Day 3 までの宿題として各チームが管理する AWS アカウントにおいてコスト最適化施策を検討します。RI/SPs のカバー率・利用率、HAQM EC2 インスタンスタイプ、ダウンサイジング可否、土日の稼働、HAQM Elastic Block Store (HAQM EBS) gp3 ボリュームの利用、HAQM S3 Glacier の利用状況などの調査により、今後のアクションと削減効果を検討いただきました。

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Day3:コスト最適化施策報告会

3 日目は、Day2 の宿題を元に各チームよりコスト最適化施策をエグゼクティブへ発表いただきました。発表内容はいずれも素晴らしく、チーム毎にコストやリソースを精査し削減額を算出しており、クイックウィン最適化の施策のみで一部チームにおいて年間 20% のコスト最適化見込みとなりました。

特に最適化の効果が大きかったのは、ここ数ヶ月の間に社内システムを幾つかオンプレミスから AWS に移行されたチームでした。クラウドへ移行した当時の状態でコスト最適化が遅れてしまい、予算を超過し続けていることがビジネス課題になってしまっているお客様が多い中で、移行後すぐにコスト最適化に着手できたことは短期的にも長期的にも良い結果となります。

施策の例としては、インスタンスタイプの再選定後の RI/SPs の購入や AWS Graviton への移行検討、Instance Scheduler on AWS を利用した土日の稼働停止などが挙がり、具体的な実施スケジュールを記載いただいたチームもございました。スポットインスタンスに関しても本番での利用はまだためらいがあるが、検証時のみ利用するなど活用の余地が垣間見えていました。

各チームの発表後、エグゼクティブからは「円安の影響もあり AWS を利用することでコストが高くなる傾向にあるが、ワークショップの形でコストを細かく削減する方法を見せていただき勉強になった。クラウドとオンプレミスのコストの違いをデータとして蓄積していきたい。商品開発の原価にも影響するため、現場のメンバーにはコストをぜひ意識してほしい」というコメントを頂戴し、FinOps EBA Party は閉会となりました。

おわりに

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本ブログでは、Sky株式会社様とワークショップを実施し、年間 20% のコスト最適化見込みとなるクイックウィン最適化施策を検討いただいた事例をお伝えしました。参加された方からは、「コストの意識を見直す良い機会でした」、「コスト削減できるポイントの洗い出しと対応方法検討を進めていきます」、「コスト最適化に利用できる AWS サービスの概要を知れて良かった」といったコメントをいただき、AWS との協業ビジネスを推進しているアライアンスチームからも、「既に最適化されているシステムだけでなく、AWS ビギナーのエンジニアを中心として立ち上げている部分にも、こういった EBA FinOps Party を適応することで、イノベーションだけではなく、コストの意識を根付かせることが可能になります。結果として、お客様にもコストを意識したご提案ができる、Sky のクラウドソリューションに繋がりますので、継続して活用していきたいです」というコメントをいただきました。

クラウドジャーニーのフェーズはお客様によって異なるためすべてのお客様で同等の効果が出るとは限りませんが、コスト最適化施策を会社全体で腰を据えて検討することは非常に効果があります。CFM フレームワークにあるとおり、コスト削減は 1 度実施すれば終わりではなく、継続的にコスト最適化を図る必要があるため、引き続き Sky株式会社様と検討した施策の遂行、効果測定およびコスト最適化施策の検討を行います。

改めて EBA FinOps Party にご参加いただいた Sky株式会社の皆様、ありがとうございました。

このブログはソリューションアーキテクト 北川 友稀 が担当いたしました。