HAQM Web Services ブログ
小売業界の新しいパラダイム : テクノロジー、データ、そしてより自然なインタラクション
この記事は 「The New Retail Paradigm: Technology, Data, and the Human Touch」(記事公開日: 2025 年 3 月 21 日)の翻訳記事です。
この 1 月、アマゾンウェブサービス (AWS) が、ニューヨークで開催された Future of Retail イベントに EMEA の大手小売業者およびパートナー 95 社を招いたことを今でも思い出します。Max Mara Fasion Group、ASICS、S-Group、Illum などの小売大手が参加し、それぞれのデジタルトランスフォーメーションのジャーニーと業界の将来のビジョンを共有しました。
小売業界をとりまく環境は、技術革新と消費者の期待の高まりにより大きな変貌を見せています。今日、小売業界の中でも最も成功している一群の企業は AI、クラウドコンピューティング、データ分析の融合に取り組んでいます。しかし業界が発展するにつれて、小売戦略に関する次のような大きな疑問が浮かび上がってきます。
小売業者はどのように AI とクラウドテクノロジーを活用して、差別化された顧客体験を生み出すことができるのでしょうか ? デジタル化が進む世界において、実店舗の未来はどのようなものになるのでしょうか? 優れた小売体験に不可欠なより自然なインタラクションを提供しながら、企業がデータを効果的に活用するにはどうすればよいでしょうか?
ユニファイドコマースの進化
小売業界は、従来のオムニチャネルアプローチからその先の「ユニファイドリテールコマース」へと向かっています。 AWS 小売・消費財業界グローバル戦略責任者 Ravi Bagal が強調したように、この進化は、テクノロジーが身近になったことで消費者が期待するものが根本的に変化したことを反映しています。HAQM Fresh の Mary Palmieri は、このことを示す実例として HAQM Fresh が現代の消費者の要求を満たす「クールで便利」な小売環境の構築にどのように注力してきたかを説明しました。
実店舗のデジタル化は、このアプローチの変革に伴って非常に重要になっています。Illum がスケーラブルで迅速に構成可能な POS システムを通じて店舗での体験をモダナイズした取り組みは、小売業者が高度なテクノロジーを個人の追跡だけでなく、オンラインで得られたインサイトを組み合わせ、消費者の行動パターンの把握にも利用している象徴的な例です。
小売業界における AI 革命
AI に投資することで、業務効率と顧客体験を向上させ、収益性を高めることができます。McKinsey によると、小売利益の 96% は上位 20% の企業によるもので、AI に投資している小売業者の年平均成長率が平均 6.2% 増加していることから AI への投資は極めて重要だと言えます:
- ASICS は、初心者のランナーが適切な商品を見つけるのに役立つ会話型 AI の実装に成功し、希望する商品の発見率とコンバージョン率の向上につながりました。
- S-Group は、食料品からファッションまで、さまざまなポートフォリオ上での顧客行動の把握に AI を使用しています。
- イタリアの有名高級小売店が AWS パートナーと提携し、最先端の生成 AI による高度なパーソナライゼーションと検索機能を提供しました。XGEN AI を使用して、小売業者はデジタルプラットフォーム全体で商品説明を充実させ、よりパーソナライズされたカスタマージャーニーを提供できます。XGEN AI は AWS 上で駆動する e コマースチーム向けのコンポーザブルな AI プラットフォームです。この独自の AI プラットフォームにより、小売業者は、生成 AI の力を借りて自動的に精選された形で商品の推奨を生成し、マーチャンダイジングを行うことが可能になりました。
小売業界における新しい交換価値としてのデータ
成長とイノベーションの推進を目指す小売業者や消費財企業にとって、データは最も価値のあるものとなっています。データは、生成 AI アプリケーションに成功をもたらす差別化要因です。AWS の生成 AI と高度な分析機能を使用することで、企業は生データを変換し、実用的なインサイトとして利用できます。こうしたインサイトを通じて、高度にパーソナライズされた体験を提供し、業務は最適化され、バリューチェーン全体で新しい機会を開拓します。
フィンランドの 290 万世帯にサービスを提供している S-Group の驚異的な成長を見ると、豊富な顧客データがいかに小売事業全体でより良い意思決定を促進できるかがわかります。データ駆動型の小売戦略の強みとして、店舗のプロファイリング、品揃えの最適化を可能にし、パーソナライズされた体験を創出する能力があげられます。高級ファッション小売業界のリーダーである Max Mara Fashion Group は、複数の販売チャネルでより統合された顧客体験を実現することで、強力なオンラインサービスをさらに強化できる機会に気づきました。Max Mara Fashion Group は、AWS のヘッドレスでコンポーザブルなアーキテクチャを実装して、包括的なデジタルトランスフォーメーションを実現するジャーニーに乗り出しました。AWS の e コマースソリューションを使用することで、同社は顧客データのセキュリティを強化しただけでなく、オムニチャネルの運用も合理化され、サービスの可用性が向上し、デプロイが自動化されました。この変革により、Max Mara Fashion Group は、デジタル時代のファッションエクセレンスの伝統を維持しながら、顧客理解とサービス向上を実現できる、より卓越した地位を確立することができました。
今後の展望 : 小売業の未来を形作る主要なトレンド
小売業者のみなさんのプレゼンテーションを見ると、重要な傾向が浮かび上がってきます。
- 生成 AI 統合 : ファッションブランドは、XGEN AI などの業界をリードする AWS パートナーが提供する、AWS 上に構築されていてすぐにデプロイできる生成 AI ソリューションを簡単に統合することで、顧客体験を大幅に向上させることができます。
- コンポーザブルアーキテクチャ:Sitoo の提供するコンポーザブルプラットフォームへの Illum の移行は、モノリシックなシステムから脱却し、スピードとシステムの俊敏性が向上するフレキシブルソリューションを採用したいという強い指向性を引き続き示しています。
- 没入感のある体験:ASICS が著名な RunKeeper アプリを買収し、そのプラットフォームとレース登録プラットフォームを統合したことで、小売業者が包括的で魅力的で高度にパーソナライズされたカスタマージャーニーの創出にどのように努力しているかがわかります。
- サプライチェーンインテリジェンス:「適切な商品を適切な場所に適切なタイミングで」届けるという課題に取り組んでいる HAQM Fresh は、データと AI/ML によって実現されるインテリジェントなサプライチェーン管理の重要性を強調しています。
実際の実装に関する考慮事項
小売消費財業界に対して AWS は、業界を牽引する企業が小売業の未来を切り開くのに役立つ、クラウド、分析、AI 機能の最も包括的なポートフォリオを提供しています。Max Mara Fashion Group での従来の POS からクラウドネイティブな業務への進化、ASICS のデータ駆動型のパーソナライゼーションアプローチなどの代表的な例は、変革を成功させるには、戦略、テクノロジー、人間中心のアプローチをバランスよく組み合わせる必要があることを示しています。
S-Groupと Illum はさらに、クラウドアーキテクチャがどのように差別化されたソリューションを実現し、従業員一人ひとりの力を高め、顧客体験とオペレーショナルエクセレンスのさらなる向上につながるかを実証しています。こうしたサクセスストーリーは、独自の変革のジャーニーに乗り出そうとする小売業者に説得力のあるモデルとなり、そこでは戦略を貫徹するための粘り強さ、継続的なイノベーション、ブランド価値に沿った技術的ソリューションが重要であることを強く示しています。
進むべき道
小売業の未来は、単にテクノロジーを実装するだけではなく、それを超えたところにあります。デジタル機能を活用して、より有意義で、パーソナライズされた、効率的なショッピング体験を生み出すことが未来につながります。AWS は、小売業者が競争力を維持するために必要なスケーラブルなインフラストラクチャ、パートナーネットワーク、革新的なソリューションを提供することで、この変革の時代において極めて重要な役割を果たしています。AWS は、クラウドサービス、ML 機能、業界固有のソリューションの包括的なスイートを通じて、あらゆる規模の小売業者をサポートしています。小売業者は AWS を使用することで、物理インフラストラクチャという従来の障壁にとらわれることなく、事業を試行し、革新し、拡大することができます。
著者について
Rajashree Rane
Rajashree Rane は、アマゾンウェブサービス (AWS) で EMEA 小売および消費財の市場開拓を主導し、業界リーダーのクラウド導入とデジタルトランスフォーメーションアジェンダを推進しています。彼女は、業界のプレーヤーがクラウドトランスフォーメーションを通じて成長を促進し、顧客体験を強化し、業務を最適化できるよう支援しています。以前は、AWS のシニアプログラムマネージャーとして EMEA における小売、日用消費財、工業、旅行業向けのクラウド GTM 戦略を構築していました。AWS に入社する前は、HAQMでAlexa スマートホームの市場開拓を主導し、イタリアのハイステークス家電カテゴリーを担当していました。Unilever では、その価値が 5,000 万ドルを超える象徴的なブランドの商品とカテゴリーの計画と変革、輸入供給計画、予測、流通を主導しました。Rajashree の得意分野は、商品戦略、カテゴリー管理、市場開拓の実施、リーン・プラクティスによるオペレーショナルエクセレンスなど多岐にわたります。そうした多様な経歴により、小売/消費財企業のブランド差別化、生産性、顧客中心主義を推進する先駆的なクラウドソリューションを生み出しています。熱心なイノベーターであるRajashree は、テクノロジーと STEM 分野の女性エンジニアの成長を支援しています。彼女は IMD ビジネススクールで MBA を、ムンバイ大学で工学の学位を取得しています。
本ブログは CI PMO の村田が翻訳しました。原文はこちら。