Redefining Tech ROI: Uniting IT and Business Expectations
著者: Chris Hennesey
テクノロジー投資における認識合わせ
経済の不確実性にもかかわらず、組織はテクノロジーへの投資が、イノベーションを推進し、競争力を維持するために不可欠であることを認識しています。しかし、すべての投資が同じように行われるわけではありません。ROI の向上をすぐに実現する投資もあれば、期待の実現が遅れたり、期待に十分に応えられなかったりする投資もあります。テクノロジー投資に関する意思決定に光を当てるために、AWS は TechTarget の Enterprise Strategy Group と連携し、世界中の 10 の業界にわたる 1,000 名の IT および基幹業務 (LOB) のシニアマネージャーを対象として調査を実施しました。この調査では、どのテクノロジー投資が最も高いリターンをもたらし、どの投資が期待を下回っているのか、およびその理由を明らかにすることを試みました。レポートの全文は、「Evaluating the ROI of Major Tech Investments」でお読みいただけます。
この調査から得られた最も印象的なインサイトの 1 つは、テクノロジーが企業の成功を左右し得る時代に、テクノロジーに関する取り組みの価値に関して IT リーダーとビジネスリーダーの間で明らかに認識合わせがなされていないということです。実際、平均的な組織は直近 12~24 か月間に 10 を超えるさまざまなテクノロジー分野に多額の投資を行っていましたが、その投資の ROI に関して両グループの間には大きな認識のギャップがありました。このギャップは、これらのグループが意思決定とテクノロジーの実際の使用にどの程度密接に関係しているかに起因しています。投資戦略やテクノロジーの実装に関与する度合いが低いグループほど、好ましいリターンを報告しない傾向にありました。

この認識の不整合が懸念を引き起こす
これにより、どのテクノロジーを優先し、どこにリソースを割り当てるかについて合意するのが難しくなり、十分に活用されていない、または効果の薄いデプロイにつながる可能性があります。また、IT とビジネスのステークホルダーの関係に悪影響が生じます。この溝を埋めることは、テクノロジー投資がより広範なビジネス目標と整合し、組織全体に実際の影響をもたらすようにするために不可欠です。そのために、意思決定者の認識を合わせ、テクノロジーの ROI を最大化するための、組織で機能しているアプローチをいくつかご紹介します。

価値に関する共通目標を確立する
認識を合わせるための 1 つの方法は、シニアステークホルダーが価値実現のための明確なフレームワークを事前に確立することです。この取り組みは、意思決定と将来の ROI 評価の指針として役立ちます。
共通のフレームワークを採用することは、ビジネスリーダーと IT リーダーが、顧客のニーズを最優先して、トレンドを追うのではなくビジネス価値に合わせて行動し、事前に決定されたビジネス目標に基づいて投資に関する意思決定の明確な根拠を提供する顧客中心のアプローチで足並みを揃えるのに役立ちます。
例えば、AWS Cloud Value Framework は、技術投資をビジネス成果にマッピングするための貴重なツールを提供し、投資に関する意思決定を行う際に考慮すべき 5 つの主要なバリュードライバーを概説しています:
- コスト削減 (TCO): コスト削減または回避の提供に焦点を当てます。KPI には、IT 関連支出やインフラストラクチャ関連支出が含まる場合があります。
- スタッフの生産性: 成果、効率、連携の改善を目指します。KPI には、実施されたプロジェクトや、戦略的な作業に費やされた時間が含まれる場合があります。
- 運用上の回復力: 想定外の中断や状況の変化時にビジネスの継続性を確保します。KPI は、セキュリティインシデントや計画外のダウンタイムを追跡するものである場合があります。
- ビジネスの俊敏性: 運用上の柔軟性と市場投入までのスピードを改善します。KPI は、市場投入までの時間と実用的なインサイトを得るまでの時間を測定するものである場合があります。
- 持続可能性: 運用による環境への影響を最小限に抑えます。KPI は、二酸化炭素の削減に焦点を当てるものである場合があります。
これらのバリュードライバーは相互に排他的ではないことに留意してください。テクノロジー投資は複数のドライバーと同時に整合し、ビジネスへの全体的な影響を増幅する場合があります。

ビジネス部門との間で現実的な期待を設定する
多くの組織は、テクノロジー投資の回収期間を過度に楽観的に設定し、多くの場合、7~12 か月以内に利益が得られることを期待するという罠に陥ります。この短期的な考え方により、実装を急ぎすぎたり、短期的な成果に重点が置かれることで、重要な長期的なメリットが覆い隠されたりしてしまう可能性があります。現実には、多くのテクノロジー投資、特に変革的または複雑な投資は、成熟してその価値を最大限に発揮するまでに時間がかかります。
現実的な期待を設定して管理するために、次が役立つ場合があります:
- IT および LOB のステークホルダーを集めて、早い段階で目標を明確にし、収益の増加やコスト削減などの成功の基準をともに定義して、より小規模で管理しやすいフェーズで提供される共通のロードマップを作成します。
- ROI の測定に関する包括的なアプローチを採用して、収益やコスト削減などの定量的なメトリクスを超えて、カスタマーエクスペリエンスやカスタマーロイヤルティの改善などの定性的なメリットを含めます (顧客は基幹業務ユーザーである場合もあります)。

継続的なコンセンサスを構築する
テクノロジー投資計画における一般的なギャップの 1 つは、現在および将来のニーズに関する意見を得るための、組織内の他のリーダーとのコミュニケーションが不足していることです。部門間で連携することで、投資が技術的に適切であるだけでなく、ビジネス目標と戦略的に整合しているようにできます。
投資の価値を最大限に引き出すには、IT チームとビジネスチームが、アイデアの創出から実装、さらにそれ以降に至るまで、投資戦略と計画プロセスのすべてのステージに関与する必要があります。これは、ビジネス上の優先順位を明確にし、共同で目標を設定するとともに、リソース割り当ての意思決定を行い、エンドユーザーからの意見を採り入れて採用戦略を策定するのに役立ちます。
当然のことながら、このプロセス全体を通じて、IT と LOB のステークホルダーの視点は異なる場合があります。ステークホルダー間の連携を効果的に構築するには、次を考慮してください:
- 新しい社会契約の構築: 多くの意思決定は「Two-Way Door」です。つまり、影響が限定的で、結果を元に戻すことができるものです。HAQM では、そのような場合、泥沼にはまるのではなく、「Disagree and Commit」のリーダーシッププリンシプルに基づいて、全員の意見を聞いてから、全員で計画にコミットします。
- 迅速な意思決定の促進: 意思決定を行う前に 100% のデータを手に入れることは事実上不可能です。HAQM は、可能な限り多くの情報が得られるまで待つのではなく、「Bias for Action」のリーダーシッププリンシプルを踏まえて、活発な議論を可能にし、意思決定を加速するために、通常は約 70% のデータに基づいて行動します。これは、元に戻せる意思決定や実験をあまり必要としない意思決定で特に有効です。

人材に投資する
最先端のテクノロジーであっても、スタッフがそれを効果的に活用するスキルを備えていなければ、その潜在能力を十分に発揮できません。適切なトレーニングとサポートがなければ、従業員は新しいテクノロジーの採用に抵抗したり、古い作業方法に戻ったり、ツールの機能の一部しか使用しなかったりする可能性があります。さらに、テクノロジーが急速に進化するにつれて、継続的な学習とスキル開発が不可欠になります。組織は、顧客のニーズと競合オファリングの先を行くために、継続的な学習の文化を育む必要があります。
テクノロジー投資の価値を最大化するために、次を検討してください:
- ベンダーと連携して、カスタマイズされた包括的なトレーニングプログラムと、セルフペース学習のオプションを開発します。例えば、AWS Skill Builder では、クラウドのあらゆる側面に関するビルダーとエグゼクティブ向けの幅広いプログラムを提供しています。
- 新しいツールとテクノロジーに関する学習セッションにリーダーシップチームを関与させ、チームを強化するために利用できるリソースや、シャドー IT として組織に持ち込まれるリスクのあるツールを認識できるようにします。
- ビジネス目標に合うようにトレーニングを調整し、新しいスキルがどのようにより良いビジネス成果をもたらし得るのかを示します。例えば、LOB の従業員がクエリを正しく構造化することでインテリジェントアシスタントを最大限に活用し、自身およびビジネスユニットの生産性を高める方法を示します。

継続的なフィードバックと調整を実施する
ビジネス環境は日々変化します。テクノロジー投資の当初の根拠は、時間が経過する中で変化したり、当てはまらなくなったりする場合があります。LOB の従業員が特定のテクノロジーを利用する方法は変化する可能性があります。あるいは、特定のテクノロジーが解決しようとしていたニーズが進化することもあります。テクノロジーがどのように利用されているのかに関する最新の情報を維持し、IT マネージャーと LOB マネージャーの間で相互理解を維持することは、継続的な取り組みです。
長期にわたってすべてのレベルのステークホルダー間で強力な連携を維持するために、組織は次の実装を検討すべきです:
- 特に新しいツールを使用している人々から、テクノロジーの実装と採用における成功と課題の両方についての正直なフィードバックを促すオープンなコミュニケーションチャネル。HAQM で使用しているツールの 1 つに、HAQM Connections があります。これは、1 つの質問で構成される、従業員向けの日常的なアンケートで、運用、テクノロジー、人などのトピックに関連するさまざまな側面を迅速に評価することを可能にしてくれます。
- テクノロジー投資の継続的な価値や、ビジネス目標との整合性を評価するための、マネージャーやシニアリーダーとの定期的なレビューサイクル。
- 実際の結果と変化するビジネスニーズに基づいてリソースの再割り当てを可能にする柔軟な投資アプローチ。

共同イノベーションの文化を育む
IT と LOB の間の客観性を確保し、認識を合わせることは、継続的なプロセスです。継続的な関与、コミュニケーション、および実際の結果に基づいて戦略を適応させる意欲が必要です。認識を合わせることを最初から優先することで、組織は、投資に関する意思決定を、より十分な情報に基づいて下すことができ、リソースの割り当てが改善され、実装が効果的になり、最終的にはビジネスパフォーマンスが改善します。テクノロジーがビジネス環境を再構築し続ける中、IT と LOB の溝をうまく埋める組織が、最も成功しやすい立場にいます。
詳細な知見と追加のインサイトについては、「Evaluating the ROI of Major Tech Investments」でレポート全文を詳しくご覧ください。

著者について
AWS、Enterprise Finance Strategist、Chris Hennesey
AWS の Enterprise Finance Strategist である Chris が、世界中のエンタープライズのエグゼクティブとの対話を通じ、顧客のためにより多くのリソースを割く一方で、スピードと俊敏性を高める上でクラウドがどのように役立つのかについて、財務管理の経験と戦略を共有します。AWS に入社する前は、Capital One で複数のテクノロジー財務部門の上級職を歴任しました。Chris は金融の学士号と経営管理の修士号を取得しています。
