100%
システムの安定性や処理速度の向上
来庁不要なオンライン手続きによる市民の満足度向上
機器更新やサーバー室など IT 関連費用の削減
概要
『町田市デジタル化総合戦略』のもと、いち早く行政の DX に取り組む東京都町田市。2022 年にはアマゾン ウェブ サービス(AWS)への基盤システム移行を開始し、デジタル庁のガバメントクラウド早期移行団体検証事業にも選定されています。システムのクラウド化 100% を推進してデータセンターの廃止や運用コストの低減に取り組みながら、市民が行政手続きをオンラインで行えるバーチャル市役所ポータル『まちドア』を開設し、窓口業務の削減と満足度向上といった成果を上げています。

課題 | デジタル化を推進する中で感じていたデータセンターの制約
東京都南西部に位置する町田市は、人口43 万人を抱える都市です。町田駅周辺は商圏 200 万人を誇る一大商業地域である一方、市内には里山や緑豊かな公園が点在し、自然と調和した街並みが特徴です。同市では、「子どもにやさしいまちづくり」を進め、子育て支援や子どもの市政への参画に力を入れています。
同市は他の自治体に先駆けてデジタル化に取り組んできました。2012 年の庁舎移転を機に全ての業務システムをプライベートクラウドで運用し、効率的な管理を実現しましたが、年数を経て新たな課題も生じました。「使い続ける中でリソースの制約、処理速度の低下、簡単に増設ができないなどの問題点が見えてきました。私たちは、クラウドサービスが柔軟で拡張性に優れていることを早くから理解していましたが、当時はまだ、行政サービスでの利用に対する合意が困難でした」と語るのは、経営改革室長兼デジタル戦略室長の高橋晃氏です。
従来の環境では、データセンターや自前のサーバー室にシステムを設置しており、新たなリソースを追加するには多大なコストと工数が避けられませんでした。基幹業務の標準化とクラウドへの移行を担当するデジタル戦略室担当課長の摩尼真氏は「5 年から 7 年ごとの機器やシステムの更新には多額の費用がかかり、更新時のシステム停止で業務にも影響が出ていました。さらに、ハードウェアの経年劣化による性能低下が、職員の日常業務にも負担となっていました」と振り返ります。
行政サービスのデジタル化においても課題があったと、デジタル戦略室担当係長の和田進吾氏は語ります。「3 層分離のネットワーク構成により、職員はインターネットに直接接続できない環境で業務を行わざるを得ず、最新のデジタルツールの活用は困難でした。また市民サービスには、手続きごとに異なるシステムが存在し、分かりにくくなっていました」

デジタル化によって職員の負担を低減しながら、市民の満足度を高めています。バーチャル市役所『まちドア』によって、4 万人近くの市民が市役所に足を運ばなくても、行政手続きが行えるようになりました"
高橋 晃 氏
町田市 政策経営部 経営改革室長 兼 デジタル戦略室長(CIO 補佐)
ソリューション | インフラから市民サービス、働き方まで全方位でクラウドを活用
町田市にとっての転機は、2020 年末に政府がデジタル庁の設置を見据えて「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を示したことです。これを受けて同市は 2021 年、『町田市デジタル化総合戦略』を策定。この戦略は、住民基本台帳や戸籍、税務などの基幹業務について、国が推進する標準化とクラウドサービスへのシフトを進めながら、市民サービスの向上や行政の生産性向上、さらには新たな価値の創出を目指すものです。2022 年になると、市の運営に必要な多様なデータを連携する統合連携基盤を、プライベートクラウドから AWS へ移行。続く 2023 年には、デジタル庁が推進するガバメントクラウドの早期移行団体検証事業に採択され、クラウド化の取り組みが大きく加速。この採択を受け、基幹業務システムを順次ガバメントクラウド(AWS)へと移行しました。
「当市が感じていた課題が国の政策と一致し、うまくタイミングが合いました。ガバメントクラウドについて、AWS の公共部門の担当者とも話をしましたが、その応対は非常に素晴らしかったです」と高橋氏は語ります。摩尼氏も、「ガバメントクラウドに AWS が採用されるとわかった時点で、知見を深めるために少しずつ使い始めました。当時すでに AWS はトップランナーで、他のクラウドサービスに比べて制約や囲い込みがなく、オープンなところも良いと感じました」と語ります。
2024 年 4 月、町田市は市民向けデジタルサービスの新たな展開として、バーチャル市役所ポータル『まちドア』の運用を開始。この取り組みは『町田市デジタル化総合戦略』に基づき、市民サービスの向上と業務効率化を目指したものです。電子申請やマイナポータル、施設予約などの各種デジタルサービスを一つの窓口に集約し、市民がより簡単に行政手続きにアクセスできる環境を整備しました。『まちドア』の先進的な取り組みは全国的に注目されており、東京都が主催する『Tokyo 区市町村 DXaward 2024』の行政サービス部門で優秀賞を受賞しています。
「市のホームページは情報量が多いため、必要な手続きを探すのが容易ではありません。『まちドア』は人を介在させないで手続きをしやすくすることを念頭に、デザインと UI、アイコンや日本語の表現にもこだわりました」(高橋氏)
さらにガバメントクラウド、それ以外のクラウド環境、SaaS を使い分けながら、効率的に移行を進め、2024 年 9 月に業務システムのクラウド化率 100% を達成。並行して職員の働き方改革も推進するため、約 4,000 人の職員にノート PC を配布し、クラウド環境のツールを活用して場所や時間に縛られない柔軟な働き方を実現。「ペーパーレスの促進や業務のデジタル化に加え、フリーアドレス制の試行や、不要となったサーバー室の有効活用などを進めています」(和田氏)
導入効果 | クラウド活用で手応えを得た、新たな行政サービスのかたち
クラウド移行を経て、町田市ではさまざまな効果が表れています。「従来と同じシステムでも処理速度が格段に早くなり、定期的な機器更改の手間も大幅に削減できました。クラウド利用については個々のシステムに焦点が当たることが多いのですが、当市は全体を 1 つのものとして捉え、クラウドへの集約を通じてコストを最適化できています」と摩尼氏は、長期的な財政負担の軽減を見据えています。
また、『まちドア』の展開によって申請の電子化が大きく進み、2024 年 4 月から 8 月末時点で約 37,000 件、前年同時期の約 2 倍の申請実績がありました。「つまり、およそ 4 万人近くの市民が市役所に来なくても手続きが行えるようになっています。職員の負担を低減しながら、市民の満足度を高めています」(和田氏)
AWS の活用について高橋氏は「当市のシステムはもともとプライベートクラウドで動いていたため、AWS に移行するのは簡単でした。IT システムでは、特定のベンダーに頼ることに対する心配の声も聞かれますが、AWS は外部への移行も容易にできます。これは、自社サービスへの自信があるからこそのオープンな姿勢だと感じています」と評価しています。
町田市の取り組みは、クラウド移行のみにとどまりません。メタバースや AI 音声を活用した取り組みや BPR で東京都が主催する『Tokyo 区市町村 DX 賞』で実装部門第 1 位や、早稲田大学マニフェスト研究所が主催する『マニフェスト大賞』でコミュニケーション戦略賞・優秀賞を受賞するなど、同市のデジタル施策は高い評価を受け、全国の自治体からも視察が相次いでいるといいます。今後はさらに高度なデータ活用を計画中で、オープンデータと未公開データの統合、データ可視化や AI による分析・検索機能の実装を構想しています。
「AI を活用して、誰もが複雑な情報を簡単に検索・分析できるようにしたいです。町田市だけでなく、全国的にも緩やかな連携ができるツールを構築し、さまざまなデータを活用できる未来を目指しています。その実現に向けて、AWS の AI サービスなどの活用も検討しています」(高橋氏)
カスタマープロフィール:町田市
東京都南西部に位置し、神奈川県とも隣接する町田市は、豊かな自然が広がる一方で、交通の利便性を背景に商業が発展してきた。多くの大学キャンパスが集まる学園都市としても成長し、現在では人口が 43 万人を超えている。「子どもにやさしいまちづくり」を進め、子育て支援や子どもの市政への参画に力を注いでいる。2021 年から「町田市デジタル化総合戦略」を策定し、トレンド技術を活用した行政サービスの向上にも取り組んでいる。

高橋 晃 氏

摩尼 真 氏

和田 進吾 氏
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